鏧子(けいす)の音

調音作業は、仏教伝来の技を現在まで伝えている技法で、職人の勘のみを頼りに、鏧子(けいす)の口径部分の内外を金鎚で叩いては音を聞き、また叩いては音を聞く、作業の繰り返しによって、調和のとれた音を導き出す作業です。鏧子は、梵音具であり楽器であるから、形を形成した後、最終段階において、調音作業してはじめて完成いたします。よってどんなに鏧子の形が良くても、調音が正しく出来ていなければ、鏧子( 楽器) としてはことを成しません。

また鏧子には、職人の言葉で、「甲・乙・聞」の3 つの音が存在します。
「甲(カン)」の音は、鏧子を打った瞬間に出る「カ~ン」と鳴る音です。
「乙( オツ)」の音は、「ワ~ン・ワ~ン」鳴る中域の音です。
「聞( モン)」の音は、最後まで鳴っている「モ~~~ン・モ~~~ン」という音です。
3つの音が存在する鏧子にはそれぞれ別々の波長(うねり)があり、まず「甲」の音を調整し、次に「甲」のリズムが狂わないように「乙」の音を調整し、最後に「甲」と「乙」の両方のリズムを変えない様に、「聞」の音を調整して完成します。


調音作業習得について

この技術の習得には、大変な時間と職人としての技量が求められます。

まずはじめの5 ~ 7 年間は、各寸法の鏧子の正しい音(リズム)を身体に、ひたすら叩き込むことを行います。師匠が行う調音作業に、じっと耳を傾け体得します。その後、7 ~ 12 年間は、自分の感覚の中で、正しいリズムを思い描きながら、正しい音に少しずつ近づける作業を行い、その後師匠に調音が正しく行われているか確認・修正してもらいます。

最終的に2 年間くらい修正しなくても、正しく調音が出来ていれば、鏧子職人として一人前の職人になることが出来ます。

【調律前後の音の違い】

調音する前の鏧子は、うねりが早く心が落ち着かず、気忙しい音色です。調音をすると鏧子は、 うねりゆったりとなり心が和み、自然と手を合わせたくなる音色になります。


【バイによる音の違い】

従来品の皮巻き撥(バイ)は、皮が薄く、撥の素材の木が軽い為、この撥で強く叩くと、耳障りなキーンと鳴る金属音が強く出てしまい、鏧子本来の心地の良い音が聞こえにくくなってしまいます。
当昇龍工房では、長年鏧子自体の「鳴りを出す」技法に修錬して参りましたが、良い音色「鳴り」は良い撥があってのことと承知致しました。撥についても工夫改良を重ね特許製法を生み出し、耳障りな金属音が軽減された鏧子本来の心地良い音色を一層強く表現できる特製昇龍撥(バイ)を創作しました。

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